浮遊艇セルフィッシュ 2
おっと、生足で本題を忘れるところでした。 いかがでしたか? 一年の滞在は?
少しも変わっていなかったわ。 兄さんらしく手を加えなかったようね。 あぁ、でも薔薇園の片隅に朝顔が植えてあったわねぇ。
薔薇園にですか?
そう。薔薇園に。 あとヘチマとヒマワリも。
まるでどこぞの夏の宿題みたいですねぇ。
そうなんでしょう。 本当に可愛がっているみたい。
誰か居るんですか?
ええ、人間の女の子。
人間!? …まぁ来れない事はありませんが、 何故あの場所に…。
…ふ。 あの場所に『用がある者』だからでしょう? なかなか面白い子だったわ。
…なるほど。 ところで、エアリスが時折塞ぎ込んでいるようですが。 何かあったのですか?
あの場所にはアレが居ましたね。 アレが何か言ったんですか?
『アレ』?
ええ、『アレ』ですよ。 あんな者、『アレ』でも勿体ない。
…あぁ、『シュレディンガー』?
…何故、貴女は名を呼ぶ?
ふふふ……。 ならば『シュウ』と呼べばいいのかしら?
どちらにせよ、 エアリスにちょっかいを出したのは事実。 あの男も相変わらず変わっていなかったわ。 あぁ、外見は大幅に変わっていたけれど。
まだ『コレクション』に成りたいとほざいているのですか?
アレが『コレクション』になるなんて想像もしたく無い。 だいたいあんな賭けに本気で勝てると思った程の『愚か者』。 世間一般様の中では実力は無くは無い方でしょうが、 『あの方』と肩を並べられると本気で思っているあたりが何とも。 ましてや、貴女を自分のモノにしようと賭けを持ちかけましたしね。 本当に『命拾いした愚か者』ですよ。 まったく…不愉快極まる。
…ねぇ、シド?
!! なんですか、突然?
私と貴方は『心』を共有している。 私に隠し事しても『心』の動きでわかる。 ねぇ、シド。 貴方、妬いているの?
隠し事は、無駄なのでしょう?
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